「働きながら介護の資格は取れる?」
「資格を取りたいけど、経験がなくても試験は受けられる?」
介護業界への就職・転職のために資格取得を考えている人もいるでしょう。
介護業界は、高齢化によって介護サービスへの需要が高まり、働き手が足りていない状況といわれています。
そのため無資格・未経験からでも働くことは可能ですが、資格を取得しておくとさまざまなメリットがあります。
この記事では、介護の資格の取り方や未経験者におすすめの資格について詳しく解説します。
これから介護の仕事を目指す方はぜひ参考にしてみてください。
介護の仕事を約10年続け、特別養護老人ホームではユニットリーダーを経験しました。
介護職に興味を持ってもらえるよう、役立つ情報をお伝えしていきたいです。
介護の仕事は働きながらでも取れるの?
介護の資格は働きながらでも取れます。
【介護職員初任者研修を例に働きながら取れる理由を解説】
- スクールが全国にあるため社会人も通いやすい
- オンライン(通信)で学習できる
- 土日も受講できる
初任者研修を取得できるスクールは、全国にあります。そのため自宅や職場から近いスクールが見つかりやすく、仕事終わりでも移動の負担が少なく済むでしょう。
講座の内容は一部通学すると他の授業は通信で学習できます。仕事をしながら通うことが難しい社会人の方でも、休日や仕事終わりの隙間時間を活かせます。
またクラスの種類も多く、土日のみのクラスや夜間のクラスなどの選択もできます。
仕事やプライベートとの調整がしやすいと学習が継続しやすくなるでしょう。
受講クラスの曜日や時間はスクールによって異なるので、しっかり確認しましょう。
介護の資格の取り方から転職するまでの手順
介護の資格を取るまでの手順をまとめました。
- 取りたい資格を決める
- 自分に合った勉強方法を見つける
- 資格試験を受験する
- 就職・転職活動を始める
資格を取った後の転職までの流れも併せて説明しますので、大まかなイメージを押さえておきましょう。
取りたい資格を決める
介護の資格は種類が多く、初心者向けの基礎的な資格から専門性が高い資格までさまざまです。どの資格を取るか悩んでいる方もいるでしょう。
取りたい資格を決める際は、自分の資格取得の目的や資格の難易度を考慮して選ぶことが大切です。
「転職に有利な資格を取得したい」「資格手当をもらって給与アップしたい」など、目的は人によって異なります。自分の目的に合わせた資格を選びましょう。
また、取りたい資格が今の自分の能力で取得可能かを見定めることも必要です。
難易度が高い資格は受講期間が長くなり、モチベーションが続かない場合もあります。
未経験の方なら、資格要件がなく受講期間が短い初任者研修から取得していくのがおすすめです。
自分に合った勉強方法を見つける
資格取得のための勉強方法は主に3つあります。
- ①通信講座を利用して資格を取得する
- ②通学で資格を取得する
- ③独学で取得する
それぞれの方法について、どんな人に向いているか挙げていきます。
自分にはどの方法が合っているか、参考にしてみてください。
【①通信講座を利用して資格を取得する】
- Web講座や教材を使用し、添削サポート等を受け効率よく勉強したい人
- 仕事や家事などで通学の時間が取れず、自分のペースで勉強したい人
【②通学で資格を取得する】
- 講師との直のやり取りや、仲間の存在からモチベーションを維持したい人
- 通える範囲に学校があり、時間の融通が利く人
- 費用がかかっても確実に資格取得したい人
【③独学で資格を取得する】
- 自分で学習スケジュールを組んで実行できる、意思の強い人。
- 費用を抑えたい人
資格試験を受験する
基本的な介護の資格のうち、初任者研修はスクーリングと講義を受講し、修了試験を受けることで修了となります。
実務者研修もスクーリングと講義を受講しますが、修了試験は義務付けられていません。
スクールによっては実施しているところもありますが、研修内容の理解度を見るためのもので、きちんと復習を行えば合格できるでしょう。
初任者研修も実務者研修も、万が一不合格になったとしても再試験に合格できれば問題ありません。
介護福祉士の試験は筆記試験と実技試験があり、それぞれ年1回実施されます。
合格後、登録申請をして資格取得となります。
就職・転職活動を始める
介護の就職活動も、流れは一般の就職活動と変わりません。
資格試験を受け、取得できたらその資格を活かせる職場や求人情報をチェックします。
介護の求人は求人サイトやハローワークなどから探せます。
福祉就職フェアなどの合同企業説明会が開催されるときもあるので、お住まいの地域で検索してみると良いでしょう。
介護施設を決めたら履歴書や職務経歴書などの必要書類を作成します。
介護の資格を取得するメリット
介護の資格を取得することで得られるメリットがあります。
- 就職・転職で有利になる
- 仕事の幅が広がる
- 給料がアップする
ここでは具体的に3つのメリットを紹介します。
就職・転職で有利
求人サイトを見ると無資格歓迎の求人もありますが、即戦力になる有資格者を募集している福祉施設も増えています。
資格を持っていることで応募できる求人が増え、求人倍率が高い施設でも採用される可能性があります。
また、介護の基礎知識があることで他の求職者よりも選考が有利になります。
仕事の幅が広がる
資格取得により介護の知識や技術を身に付けると、仕事の幅が広がります。
初任者研修以上の資格を取ると、無資格では働けない訪問介護の仕事にも就けます。
訪問介護は、基本的にスタッフ1人で利用者様の自宅でケアを行います。
周囲のサポートが得られやすい施設職員とは異なり、自分1人で臨機応変に対応する力が身につきやすいでしょう。
無資格と有資格者の主な仕事内容の違い | |
無資格の 介護職員 | ・生活援助(調理、洗濯、掃除など)・身体介護(入浴介助、排泄介助など) ※有資格者の監督が必要になる |
初任者研修以上 の修了者 | ・生活援助(調理、洗濯、掃除など)・身体介護(入浴介助、排泄介助など) ・訪問介護業務 |
給料がアップする
介護資格の種類によって資格手当が付き、給料がアップする場合もあります。
以前筆者が働いていた介護施設では、介護福祉士の資格手当は月1万円でした。資格手当だけでも1年間貯めると12万円になります。
貯めたお金で旅行に行って気分転換をするのもいいですね。または時短家電を買って家事の負担を減らせば、生活に余裕が持てるでしょう。
給料がアップすることは、資格取得のモチベーションにつながります。
参考:介護職員の平均給与額の状況(月給・常勤の者、保有資格別)
|厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
介護の資格を取るなら学校と独学どっちがいい?
資格を取得する方法のうち、2つの方法について解説します。
- 学校に通って学ぶ
- 独学で学ぶ
ただし介護の資格取得には実務が必要な資格もあるため、完全な独学では取得できないものもあり、確認が必要です。
「通学」と「独学」、それぞれのメリット・デメリットを比べてみましょう。
学校に通うメリット・デメリット
【学校に通うメリット】
- 講師から対面で授業を受けられるので、疑問点は直接質問ができる
>>専門性が高く知識が豊富な講師からは、経験談や現場の様子などネットの検索では分かりにくいリアルな情報が得られるでしょう。
- 学校で使用するカリキュラムには、過去の事例や出題傾向が反映されている
>>無駄のない学習計画により、短期間で効率よく学べます。
- 教室で授業を受けるという環境は、家で1人で勉強するよりも集中できる
>>同じ目標の受講生と励まし合いながら勉強できることも、モチベーションの維持につながるでしょう。
【学校に通うデメリット】
- 受講料が必要なため、独学よりも資格取得にかかる費用が高くなる
>>学校によっては10万円以上の金額がかかるでしょう。
通学ための交通費がかかる場合もあり、資格取得の費用を抑えたい方には大きなデメリットになります。
- 登校日や授業の時間が決まっていることが多く、自分の生活に合わせた日程調整が難しい
>>仕事や子育てで時間の融通が利かない人には、休まずに出席するのが難しくなるかもしれません。
独学で学ぶメリット・デメリット
【独学で学ぶメリット】
- 資格取得にかかる費用が抑えられる
>>学校に通うと10万円以上の受講料がかかる場合もありますが、独学の場合はテキストの購入費と試験の受験料のみで済みます。
- 自分のペースで学習できる
>>仕事や家事などでまとまった学習時間が取れない方でも、仕事から帰って寝る前の時間や休日などの空いた時間を活用できます。
ライフスタイルに合わせた学習スケジュールを組めると、無理なく続けられるでしょう。
【独学で学ぶデメリット】
- 講師や仲間がおらず、疑問点は自力で解決しなければならない
>>解決するのに時間がかかりますし、自分の理解度や上達度を客観的に判断するのが難しくなります。
- 資格取得までの期間が長くなりやすい
>>自分のペースで進められる分、学習時間の確保ができないと開始当初のモチベーションの維持が難しくなります。
学習スケジュールの管理と資格取得を目指す強い意志が大切になります。
未経験者におすすめの介護の資格
介護が未経験の方には、以下の条件の資格がおすすめです。
- 資格要件無しで受講できるもの
- 基礎的な内容で難易度が高くないもの
- 短期間で取得できるもの
受験資格や試験内容も併せて、3つの資格について説明していきます。
介護職員初任者研修
講義と実技演習により、介護職員に必要な基礎知識や介護技術を学べる入門的資格です。
実技演習があるため独学では修了できません。通学か通信講座で修了できますが、通信講座はスクーリングが必須になります。
すべての課程を修了後に修了試験を行うことが義務付けられています。
初任者研修を修了すると、無資格では就けない訪問介護の仕事に携われます。訪問介護業務は施設介護と異なり、利用者様と1対1でケアを行います。
施設介護よりも、相手に寄り添った細やかなケアを行える点はやりがいにつながるでしょう。
働き方については、時間の指定や仕事量の調整が可能です。自分のペースで働けることは大きな魅力ですね。
参考:介護員養成研修の取扱細則について|厚生労働省「介護職員・介護支援専門員」
受験資格
受講・受験資格はなく、知識や経験がなくても誰でも受講できます。
10科目130時間のうち、通信での講義は40,5時間以内で残りの89.5時間はスクーリングが必須になります。
初任者研修を修了していると、介護福祉士実務者研修を受ける際に両方の研修に共通している130時間分の科目受講が免除されます。
いずれ実務者研修を受けようと考えている方には、ステップアップのための最初の資格といえるでしょう。
試験内容
修了試験は1時間ほどの筆記試験です。
試験問題は各スクールが作成していますが、内容は厚生労働省によって定められており大きな違いはありません。
出題形式は「選択式のみ」と「選択式+記述式」のパターンがあり、スクールによって異なります。
試験の合格ラインは100点満点中70点以上ですが、難易度は高くなく真面目に受講していればほぼ合格するでしょう。
この試験はこれまでの勉強の理解度を見るために実施するので、万が一不合格だった場合でも、再試験で合格できれば問題ありません。
介護福祉士実務者研修
質の高い介護サービスを提供するために、より実践的な介護の知識と技術の習得を目的とした資格です。
初任者研修の上位資格にあたり、医療的ケアに関する基礎知識を学べます。
実務者研修を修了すると、訪問介護事業で配置が必須となる「サービス提供責任者」に就くことも可能です。連絡や調整などのマネジメント業務が主な仕事になるため、業務の幅が広がります。
また、実務者研修の修了が介護福祉士国家資格の受験資格の条件の1つでもあり、国家試験のうちの実技試験が免除されます。
参考:実務者研修の指定基準について「介護福祉士の資格取得方法の見直しの延期について」|厚生労働省「介護福祉士養成施設における医療的ケアの教育及び実務者研修関係」
受験資格
受講・受験資格はなく、経験や保有資格が無くても誰でも受講できます。
20科目450時間の講義と実技演習を受けますが、実際の現場での医療的ケアの実施は実務者研修課程修了後に「喀痰吸引等研修」の受講が必要です。
先に初任者研修を修了していなくても受けられますが、修了していると130時間分の受講が免除されます。スクールによって金額は変わりますが、その分受講費用も免除になります。
また、すでに旧ホームヘルパー(訪問介護員養成研修課程)1級を修了していると355時間、介護職員基礎研修を修了していると400時間が免除になります。
試験内容
修了試験は義務付けられておらず、全ての課程を終えると修了となります。
スクールによっては試験を実施しているところもありますが、初任者研修の修了試験と同じように講義の理解度を確認するためのものです。
難易度は高くなく、講義をきちんと受けていれば合格できるでしょう。
もし試験に落ちても再試験を受けられます。
試験も大切ですが、受講時間が450時間以上と長期間に渡るので、途中で挫折しないよう通学の日程確認や課題の提出など毎日の積み重ねが重要になります。
認知症介護基礎研修
認知症介護の基本を学ぶための入門的資格です。
認知症の人や家族の視点に立ち、利用者本人が主体となる介護を行うための基礎的な知識や技術を学びます。
これまでは無資格・未経験でも介護の仕事に就けましたが、2021年4月の介護報酬改定により、受講が義務付けられました。
2024年3月末までは経過措置期間のため未受講でも働けますが、2024年4月からは完全に義務化されます。
4月以降も、無資格の新入職員には1年間の受講猶予があります。
働きながら1年以内に受講しましょう。
参考:令和3年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省「令和3年度介護報酬改定について」
受験資格
受講・受験資格はなく、申し込めば誰でも受けられます。
受講が義務付けられるのは、直接介護に関わる無資格の職員です。
初任者研修や実務者研修を含む介護系の資格や、医師・看護師などの医療系の資格を持っていると免除されます。
また、介護に関わらない業務の職員も受講の必要はありません。
ただし認知症サポーター養成講座などの認知症の民間資格は免除されないため、受講が必要です。
事業所が対象者に受講させていない場合、行政指導の対象となる可能性があります。
参考:介護保険最新情報Vol.945「介護保険法施策規則第140条の63の6 第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について|厚生労働省 介護保険最新情報掲載ページ
試験内容
自治体により異なりますが、eラーニング(動画視聴)または講義・演習形式で実施されます。
eラーニングは5章150分ほどの動画視聴で、各章ごとの講義動画を視聴後に◯✕式の確認テストを受けます。
全問正解すると次の章に進み、すべての学習が終了すると受講修了となります。
講義・演習形式は、講義3時間・演習3時間の内容です。
修了試験はなく1日で修了する研修のため、他の介護系の資格と比べると受講しやすい研修です。
介護の資格の取り方でよくある質問
介護未経験の方が資格取得を目指す際、資格の取り方でよくある質問をまとめました。
- 介護の資格を取る順番は?
- 介護は資格なしでも働ける?
- 介護の仕事内容ってどんな感じ?
介護の資格を取る順番は?
介護の資格を取る順番に決まりはありません。
しかし上位の資格を受験する際に、実務経験や他の研修の修了が必須条件になる場合があります。
未経験であれば、入門的資格の初任者研修を修了して介護の基礎を身につけましょう。
そのあと介護現場で働きながら実務者研修を修了します。実務経験を積むと介護福祉士の受験資格を得られます。
このように段階的に資格取得をしていく方法がおすすめです。
介護は資格なしでも働ける?
無資格でも介護の求人はあります。
事務作業や送迎業務などは介護の資格は必要ありません。本記事で挙げたような資格を持っていなくても、働くことは可能でしょう。
ただし介護職員を目指す場合には、認知症基礎介護講座の義務付けにより2024年4月から無資格では働けなくなります。
あらかじめ初任者研修等の資格を取っておくと、より条件の良い求人を選べ、就職・転職に有利になります。
介護の仕事内容ってどんな感じ?
介護職の仕事内容は大きく2つに分けられます。
- ①身体介護:移動・移乗介助、入浴介助、排泄介助、食事介助などの直接身体に触れる介護
- ②生活援助:掃除、買い物、食事準備、洗濯などの体に触れない生活面の援助
介護の仕事は利用者の健康状態の観察や気配りが欠かせず、状況に応じた対応が求められます。また利用者に寄り添い、信頼関係を築くことが重要になります。
まとめ
本記事では、介護の資格の取り方や未経験者におすすめの資格について解説しました。
介護の資格は幅広く、現場で働きながらでも資格取得を目指せます。
無資格でも働き始められますが、身体介護を行うには資格が必要になります。
未経験者におすすめの介護の資格は、介護職員初任者研修です。通信講座+スクーリングのコースは、カリキュラムの3分の1は自宅学習できます。
スクーリングは土日のみや夜間のコースもあるので、働きながら学ぶ際の負担が少ないでしょう。
上位資格として介護職員実務者研修や介護福祉士などの資格があり、働きながらキャリアアップも目指せます。
働いていく中で、自分の目標を明確にすると必要となる資格が見えてきます。自分に合った資格を見つけて、資格取得を目指しましょう。