「ネットワークスペシャリストは意味がない」と、耳にする方もいるのではないでしょうか。

確かにネットワークスペシャリストの試験に合格するには、多くの労力と時間がかかります。資格を取るのは無駄なのではと一度は不安になりますし、大切な家族と時間を削ることも少なくありません。

しかし、ネットワークスペシャリストに合格すれば、「年収アップ」「ワンランク上の会社への転職」など、理想の生活を手に入れる可能性を秘めています。

本記事ではネットワークスペシャリストが意味がないと言われる理由や取得するメリット、資格をとって意味がある人・ない人の特徴を解説します。

onosoks

IT企業に25年勤務のITプロフェッショナル。
IPA情報処理試験ネットワークスペシャリスト/プロジェクトマネージャに合格。
日系・外資系企業で様々なプロジェクトを経験。エンジニアとの豊富な交流で幅広い視点を持つ。

    ネットワークスペシャリストとは?

    ネットワークスペシャリストとは、ネットワークに関する国家資格の中で、もっとも高度な技術力と専門知識を有する資格です。

    難易度は最も高く、経済産業省が定めるITスキル標準のスキルレベル4に位置付けられています。

    試験は年に1回、4月に行われます。午前と午後4つのパートに分かれ、それぞれ100点満点で採点されます。すべてのパートで60点以上取ると合格です。

     午前Ⅰ午前Ⅱ午後Ⅰ午後Ⅱ
    試験時間9:30~10:2010:50~11:3012:30~14:0014:30~16:30
    出題形式マークシート 4択マークシート 4択記述式記述式
    出題数30問25問3問から2問選択2問から1問選択
    参照:独立行政法人情報処理推進機構|ネットワークスペシャリスト試験

    ネットワークスペシャリストが意味ないと言われる理由

    ネットワークスペシャリストが意味がないといわれる理由を3つ上げます。

    • 資格をとっても昇給につながらないケースがある
    • 勉強に時間がかかるから費用対効果が合わない
    • 合格が難しい

    資格をとっても昇給につながらないケースがある

    ネットワークスペシャリストの資格が意味ないと言われる理由の一つ目は、「昇給につながらないケースがあるから」です。

    ほとんどの会社はネットワークスペシャリストを資格手当の対象としています。

    しかしまれに自分の会社に資格手当の規定がないケースも考えられます。実際に筆者の知り合いはネットワークスペシャリストの資格に合格し、会社での評価はあがったものの、資格手当の対象にはなっておらず昇給には至りませんでした。

    「ネットワークスペシャリスト試験合格」→「昇給」をねらう場合、一番の近道は資格手当による昇給です。

    ネットワークスペシャリスト試験に合格し昇給を目指している場合は、

    「ネットワークスペシャリストが資格手当の対象になっているか?」まずはここをチェックしましょう。

    勉強に時間がかかるから費用対効果が合わない

    筆者が知っているネットワークスペシャリストの合格者にヒアリングした結果、平均的な勉強時間は100~400時間であり、1日に1~2時間の学習を平均的に行っており、合格までの準備期間は、3~6か月が一般的です。

    筆者自身も平日1~2時間、土日に3~4時間の勉強を3か月間続け、1回目の試験に臨みましたが、午後のセクションでは半分しか解答できませんでした。それでもあきらめず継続して勉強し、翌年の2回目の試験で合格しました。

    ネットワークスペシャリストの資格を目指すことは、相当な時間とエネルギーが必要です。勉強を継続する体力・精神力が継続的に求められます。

    忙しい社会人にとってはラクな道ではありません。

    まずは資格を取得する目的を明確にすることが重要です。

    合格が難しい

    ネットワークスペシャリストの合格率は約15%であり、非常に難易度の高い試験です。

    直近3年間の合格率(合格者/受験者)を応用情報技術者試験と比較してみると、その難易度がよくわかります。

     ネットワークスペシャリスト応用情報技術者試験
    2021年12.8%24.0%
    2022年17.4%24.3%
    2023年14.3%27.2%
    参照:独立行政法人情報処理推進機構|応募者・受験者・合格者の推移表

    特に午後の問題はネットワークの知識に加えて、長い文章から情報を整理する能力、指定された文字数にまとめる文章力が求められます。

    合格への準備は、単なる知識だけでなく、文章表現のスキル情報整理能力の向上も含めたトータルな対策が重要となります。

    ネットワークスペシャリストの資格を取得するメリット

    次にネットワークスペシャリストを取得するメリットを見ていきましょう。

    メリットは以下の4つがあります。

    • 社内評価が高くなる
    • 転職活動で有利になる
    • 人材としての価値が向上する
    • 年収が上がる

    社内評価が高くなる

    ネットワークスペシャリスト試験に合格すると社内評価が高くなります。


    それは、多くの会社がネットワークスペシャリストの資格取得を推奨しており、試験に合格することは社内貢献度が高いためです。

    企業がネットワークスペシャリストの資格取得を社員に推奨する大きな理由は以下、2点です。

    • 国家資格であるネットワークスペシャリスト資格保有者を多く抱えることで、顧客への安心感を示したい
    • 官公庁関連の案件に入札するには、ネットワークスペシャリストをプロジェクトメンバーに入れることが入札条件になっていることがある。そのため、ネットワークスペシャリスト取得者を増やしたい

    ネットワークスペシャリストに合格したあなたは、社内評価が高くなり、より責任あるポジションを任せてもらえる可能性があります。

    転職活動で有利になる

    転職活動でも、ネットワークスペシャリストを保有していることは有利になります。

    その理由3つです。

    • 高度な資格であるネットワークスペシャリストは希少性が高く、年収の高い求人に応募できる
    • スキルアップに前向きでかつ学習意欲の高い人物として評価される
    • 書類選考の通過率が上がる

    ネットワークスペシャリストの資格は非常に希少であるため、転職活動において強力な武器になります。年収交渉に活用できますし、履歴書に記載できれば人事の注目を浴び、面接の機会を得るきっかけとなります。

    人材としての価値が向上する

    ネットワークスペシャリストは難易度の高い試験であるため、合格することで高いスキルを持つ人材であることが証明されます。

    IT業界において、ネットワークスペシャリストの資格を持つ人は非常に少なく、市場価値は飛躍的に上がります。

    ネットワークスペシャリストの試験を突破することは、以下の能力が高いことを示します。

    • 顧客への説明能力
    • 課題解決能力
    • マネジメント能力

    上記の能力は、ネットワーク関連の業務に限らず、IT業界全体で必要なものです。

    ネットワークスペシャリストの資格を持つことは社会人としての価値を確実に向上させるため、絶対に損のない資格です。

    年収が上がる

    ネットワークスペシャリストに合格すると年収の増加が見込めます。

    参照:レバテックキャリア|ネットワークスペシャリストの平均年収

    【年収が上がる理由2つ】

    • 資格手当による年収アップ
    • 職位向上による年収アップ

    最もわかりやすいのは資格手当です。IT業界の多くの企業がネットワークスペシャリストを資格手当の対象にしています。

    資格名資格手当
     基本情報技術者5,000円前後
    応用情報技術者5,000~2万円
    ITストラテジスト2万~3万円
    ITサービスマネージャ1万~2万円
    プロジェクトマネージャー1万~2万円
    システム監査技術者1万~2万円
    エンベデッドシステムスペシャリスト1万~2万円
    ネットワークスペシャリスト1万~2万円
    参照:転職Hacks|IT業界で使える資格と資格手当の相場一覧

    ネットスペシャリストの資格をとって意味がある人・ない人の特徴

    ネットワークスペシャリストの資格が本当に必要かどうかを検討することが重要です。

    資格を取得して意味がある人

    ネットワークスペシャリストの資格取得に意味がある人は以下のとおりです。

    • 官公庁や金融機関の案件、システム刷新等の大規模に参画したい人

    入札条件に「ネットワークスペシャリスト資格所有者がメンバーにいること」が記載されることが多くあります。

    • マネジメントスキルを付けたい人、プロジェクトマネージャを目指す人

    ネットワークスペシャリストの資格取得を通して得た知識や技能は、総合的なマネジメントに応用できます。

    資格を取得して意味がない人

    ネットワークスペシャリストの資格は以下の人にはあまり意味がない可能性があります。

    • 資格を取得することそのものが目的であり、資格コレクターのような人
    • 外資系企業に勤務している人

    成果を重視する傾向にある外資系企業では資格を取得すること自体は価値がない可能性があります。

    • プログラマーやWebエンジニアなど、ネットワーク関連とかけ離れた職種の人

    スキルセットとのミスマッチが起き、ネットワークスペシャリストの資格は意味を持たない可能性があります。

    ネットスペシャリストの勉強手順

    ここでは、ネットワークスペシャリストの勉強手順、おすすめの参考書・講座を紹介します。

    試験内容を理解する

    試験の形式、傾向を知らずに進めると時間を無駄にする可能性があります。

    ネットワークスペシャリスト試験の各セクションの出題内容です。

    セクション出題内容
    午前Ⅰ応用情報技術者の午前問題から出題され、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系とまんべんなく出題されます
    午前Ⅱネットワーク分野が17、18問を占め、3~4問がセキュリティ分野、その他分野が3~4問といった構成で出題されます
    午後Ⅰ大問形式で3問出題された中から2問を選択します。様々なケースを想定した文章問題で「企画・開発」「技術要素」「運用・保守・管理」など様々分野が出題されます
    午後Ⅱネットワークの技術面および運用・管理面を含む総合的な問題。2問の中から1問を選択します。 10ページ以上の問題文から要点を読み解き、定められた文字数で解答します

    ネットワークスペシャリスト試験は、午前と午後で形式が大きく異なります。

    試験内容をしっかりと理解し、効率的な勉強計画を立てましょう。

    参考書を購入する

    ネットワークスペシャリストの勉強を始めるには、参考書を使い学習するのが一般的です。

    教科書系、問題集系、過去問系の参考書を揃えるのがおすすめです。

    筆者がおすすめする参考書は以下の3つです。

    書籍名価格
    (税込)
    分類特徴
    翔泳社 情報処理教科書 ネットワークスペシャリスト 2023年版3,168円教科書基礎知識(LAN、WAN、TCP/IP、DNS等)から応用知識(設計、信頼性、性能、セキュリティ、移行・運用)まで出題傾向に合わせて詳しく解説しています。
    アイテック  2023 ネットワークスペシャリスト 総仕上げ問題集4,070円問題集本試験過去問題を詳細解説している。直近3期分の詳細な解答と解説を収録しています。  
    技術評論社 ネスペR5 -本物のネットワークスペシャリストになるための最も詳しい過去問解説2,860円過去問難易度の高い午後の問題について過去問を徹底的に分析しています。  

    初めて受験する方は、まず教科書からスタートしてみましょう。次に問題集を解いて試験の問題に慣れましょう。その後、過去の問題に挑戦して、実際の試験をシミュレーションすることで合格への準備がより効果的になります。

    段階的に進めていくことで自信をつけていけますよ。

    講座の利用を検討する

    書籍での勉強では、不安な人、ゼロから学びたい人には講座による学習が良いでしょう。

    おすすめする講座は、以下の3つです。

    講座名価格(税込)特徴
    TAC ネットワークスペシャリスト本科生・本科生プラス85,000円テキスト、及び動画による学習。模擬テストもあり。教育給付金の対象となっており、条件により受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。[15]   
    ITEC 2024 ネットワークスペシャリスト スタンダードコース45,100円テキスト、及び動画による学習。模擬テストもあり。
    udemy「令和6年:現役講師が教える「データベーススペシャリスト」試験 午後1対策講義」 8,800円 「ネットワークエンジニアを目指す初心者はここから始めよう!「ゼロから学ぶネットワーク基礎」豊富な図解で徹底解説」 27,800円世界最大のオンライン学習サービス。ネットワークスペシャリスト関連の講座もレベルに合わせて約20あります。
    キャンペーンによる割引、サブスク等様々な利用形態が可能です。  

    予算に合わせて、TACまたはITECを選ぶことをお勧めします。udemyはネットワークスペシャリスト以外にも自己啓発や趣味など、将来に役立つさまざまなコンテンツが充実しています。コストパフォーマンスが高く、最適なプラットフォームです。ぜひ活用してみてください。

    ネットスペシャリストに関するよくある質問

    ネットワークスペシャリストに関して、よくある3つの質問について回答します。

    • 資格の活かし方
    • ネットワークスペシャリストの将来性
    • 求人の探し方

    ネットワークスペシャリストは将来性があり、求人もたくさんありますので、自信を持って取り組みましょう。

    ネットワークスペシャリストの資格の活かし方は?

    ネットワークスペシャリストを取得することで、ネットワークエンジニアはもちろん、そのほか、セキュリティエンジニア、フルスタックエンジニアの道を開くことも可能です。

    • ネットワークエンジニア

    高度なスキルを持つネットワークのスペシャリストとしてより幅広い現場で活躍できるようになります。

    • セキュリティエンジニア

    近年は、スマートフォンの普及やクラウド環境の活用など、様々なネットワーク環境や通信経路に配慮したセキュリティを構築する必要があり、ネットワーク関連の知識も必要とされます。

    • フルスタックエンジニア

    Webアプリケーションなどの開発を1人で行うフルスタックエンジニアはネットワーク技術に精通していることで、開発・障害分析に役立てることができます。

    ネットワークスペシャリストの将来性は?すごさはどれくらい

    ネットワークエンジニアの将来性は非常に高く、これからも長く重要な役割を果たす資格と言えます。

    社会が直面するネットワーク関連のテーマは多岐にわたり、案件は増加する傾向にあります。

    【社会が直面するネットワーク関連のテーマ】

    • IP枯渇問題
    • 5Gネットワーク通信
    • 車、家電のコネクテッド化
    • スマートフォンでのオンラインゲームの流行

    ゲームのアップデート、アカウント管理、課金機能など、ネットワークエンジニアが関わる部分が増えており、需要は尽きる心配はありません。ネットワークスペシャリストは、今後も長期間にわたり注目され続ける資格となるでしょう。

    ネットワークスペシャリストの求人はどこで探す?

    以下は、特にネットワークエンジニアに強い求人サイトです。

    IT・Web・ゲーム業界に特化した転職エージェント。ネットワークスペシャリストの求人も多数あります。

    IT業界専任のアドバイザーによるサポートが受けられる。ネットワークスペシャリストを保有することで求人数の増加、高年収の求人が来ます。

    IT・Web業界に特化している訳ではないが、求人案件・内定決定数とともに業界NO.1の転職エージェントである。当然ネットワークスペシャリストの求人も多く存在します。

    大手である「リクルートエージェント」とIT・Web・ゲーム業界に特化している「ギークリー」の2つに登録することがおすすめです。

    まとめ

    本記事では、ネットワークスペシャリストが「意味がない」と言われている理由を解説しました。

    資格を取ることだけが目的であったり、実務経験の不足や自社の業務にマッチしていない場合、ネットワークスペシャリストは意味がない可能性があります。

    しかし、それ以外のケースではネットワークスペシャリストの資格は非常に有益な資格です。難易度の高い試験に受かったというステータスを得られ、年収アップが見込まれます。

    ネットワークスペシャリストに興味を持っているあなた、ぜひ今からネットワークスペシャリストの勉強を始めてみませんか。新たなスキルやキャリアの可能性が広がるかもしれません。お気軽に始めてみてくださいね。